NARUTO二次創作腐女子サイト。カカナルオンリー。
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過去のサルベージ3。
読み返せば読み返すほど、過去の作品は暗いかエロいかのどちらかで、自分で自分を問いただしたい。
読み返せば読み返すほど、過去の作品は暗いかエロいかのどちらかで、自分で自分を問いただしたい。
おやすみ、おやすみ。
今は安らかに眠ればいいよ。
いつか、君を救えるほどの力を、きっと手にいれるから。
だから、今は眠っていて。
無力で愚かな僕の傍らで。
風のない静かな夜。
雲ひとつない夜空を彩る月だけが煌々と、眠りに落ちた里を照らしている。
ひっそりと静まり返った夜では、動くものも見当たらず、虫の音だけが染み入るように響いていく。
時折、上忍だろうか。人影のようなものが一瞬横切っては消えていく。音といえばそれぐらいで、忍の里という名に相応しいほど、静寂で満ちていた。
カカシは、そんな夜の暗闇に紛れるようにして、佇んでいた。
場所は、通いなれたナルトの自宅のある古びたアパートの脇。
今にも崩れそうな様子を呈している壁にもたれるようにして、ただ時間が過ぎ去るのを待っているのだ。
カカシにとって、悪夢ともいえる、この時間を。
壁一枚隔てた室内からは、途切れ途切れの甘い声が聞こえてくる。
乱暴に笑う声と、嬌声とも啜り泣きとも聞こえるナルトの声。
「ほら、もっと足開けよっ。」
「あっ・・・ひぃっ、あぁんっ!!」
「へっ・・相変わらず、シマリのいい穴だよな、てめぇは。」
「やだぁ・・もぅ、はぅっ!」
上忍としての能力の高さ故、常人であれば聞き取れないような音まで拾ってしまうカカシの耳には、中の会話すら届いてしまう。
カカシはそんな己の能力の高さをこの時ばかりは恨まずにはいられない。
ギリギリ・・と音が聞こえるのではないか、という程強く握り締めた拳には、いつだって薄っすらと紅く血が滲んでしまう。
恐らく誰も見ていることなどないと分かりつつ、カカシは決してそのポーカーフェイスは崩さない。
むしろ、普段よりもその無表情には磨きがかかり、一見すると能面のように見えた。
その間にも、中からはナルトのあられもない声と、男の嘲笑にも似た声が絶え間なく聞こえてくる。
声に重なるようにして響くグチュグチュという水音すら、漏れ聞こえ始める頃には、ナルトの声は切れ切れの悲鳴となっていた。
「ヤメテ」というナルトの悲鳴に重なるように聞こえる男の下卑た嘲笑が耳に入るたびに、動きそうになるカラダを押さえつけて、カカシは怒りとも、憎悪とも形容しがたい感情を内に秘めたまま、ただ時間が早く過ぎ去ることだけを祈っていた。
カカシにとっては、地獄のような時間が終わったのは、握り締めたカカシの手の平から、血が滴り始めた頃だった。
ガシャガシャと耳障りな音を撒き散らしながら、男が階段を降りてくる。
どこまでも野蛮でガサツに雰囲気を隠そうとしない男が、忍びではない一般人、そしてヤクザまがいの男であることをカカシも知っている。
ナルトだけではなく、誰にとってもタメにならないその男を、カカシは何度殺そうとしたかわからない。
けれど、所詮それはできない話だった。
その代わり、カカシは何度となく男を殺した。その頭の中で。
誰よりも惨く、そして苦しみが続く殺し方で。
それは、この男だけでなく、こうしてナルトの元を訪れる男は、全て殺している。
男は、カカシの存在に気づくことはもちろんなく、どこか満足そうに笑いながら、夜の道を歩いていく。
カカシはその後姿にすら激しい殺意を抱いて、ついクナイを投げそうになってしまう。
その衝動をなんとかやり過ごして、カカシは今しがた男が降りてきた階段を音もなく駆け上がった。
その僅かな距離が酷く、もどかしい。
「ナルト!」
半分空いていたドアを蹴破る勢いで駆け込んだ室内。
見慣れた室内はひっそりとしていて、昼間の雰囲気とはまったく違う空気を漂わせていた。
そこにあるテーブルも椅子も、見慣れたものであるのに、違うもののようにも見える。カカシは、何度体験してもこの空気が嫌いだった。
人の気配がまったくない部屋を横切り、窓辺のベットに近づけば、シーツに埋もれるようにして伏すナルトの姿があった。
白い肌には赤い鬱血の後が散り、下肢は夥しい体液で濡れていた。
よっぽど乱暴に扱われたのか、手首には掴まれた跡があり、太股を伝う液体は薄くピンク色に染まっていた。
くたり、と意識がないのか力なくカラダを投げ出している姿は酷く痛々しくて、ベット脇でそれを見下ろしカカシは知らず奥歯を噛み締める。
あまりにも強く噛み締めすぎたのか、口内に広がる鉄の味。それも、もう何度も味わった苦味だ。
それだけではない。光景は違えど、カカシはもう何度もこのように陵辱されたナルトの姿を見てきた。
この静まり返った夜の気配も、まるで知らない人間の家のような空気も、全てがもう幾度となく味わっている。
そしてその度に、カカシは思い知るのだ。自分の無力さを、不甲斐なさを。
どれだけ、『写輪眼のカカシ』と言われようが、恐れられようが、結局自分はコドモーナルト1人助けられない。本当に愛しい人間すら、救えない。
「ナルト・・・。」
ただ、名前だけを呼んで。カカシはそっとベット脇に跪く。
震える手で、色味のないナルトの頬に触れる。柔らかく滑らかな肌は、触れる感触こそ変わらぬもの、いつもの瑞々しい輝きは失われている。
「ナルト・・・・。今、キレイにしてあげるからね。」
カカシは今だ気を失ったままのナルトにそう呟き、手馴れた様子でナルトの処理をしていく。
体内に残る残滓を始末し、濡らしたタオルでカラダを優しく拭いてやる。
そうして、所々できている擦過傷や噛み跡にクスリをぬってやって、カカシは取り替えたシーツの上にナルトを横にした。
そろ頃になってようやく、ナルトが身じろぐ気配がしたので、カカシは優しく髪をすいてやりながら、名前を呼ぶ。
「ナルト。」
その声に、反応するようにそろそろ・・と瞼が動く。白く血の気を失った瞼の下から現われたのは、澄み切った空の色・・ナルトの瞳。
けれど、その色は普段より澄み切って、空というよりは、魚も住めないほどの水を彷彿させた。
キレイなキレイな・・キレイすぎて、誰も近づけない水。
「ナルト・・・カラダは大丈夫か?」
そっと、精一杯の愛しさを込めてカカシが問いかければ、ナルトは首を動かしてカカシを見た。
「うん・・大丈夫だってばよ・・。」
もどかしげに動く唇から零れる声は掠れて、痛々しい。それほど、喉を酷使したという事実に、カカシはまた怒りで震えが走りそうになる。
それを必死に精神力で押さえつけて、ナルトの髪を梳き続ければ、ナルトは心地良さそうに目を細めた。
「カカシセンセェがキレイにしてくれたんだってば・・?」
清められた体にそう尋ねるナルトに、カカシは頷いた。そんなカカシにナルトは、ありがとう、と言って困ったように笑った。
「センセェにめーわくかけたってば・・。」
「別にいいんだよ、気にしなくて。」
「ごめんね、センセェ。」
「いいんだ・・いいんだよ、ナルト。だから、もう眠りな。もうすぐ朝になる。」
「そうだってばね・・もうすぐ、朝・・・任務だってばよ・・・。」
繰り返される会話は酷く穏やかで、寂しい。
カカシは、その間もずっとナルトの髪を梳く。ナルトの口調は、カカシの手が髪を好くたび、緩やかになって、途切れがちになる。
カカシは、ナルトの瞳がウトウト・・・とまどろみ始めたのを穏やかな眼差しで見守っていた。
「センセェ・・明日の任務・・・。」
ナルトは、何かを言いかけたまま、くてん、と眠りの淵に落ち込んでしまった。
「・・・・おやすみ、ナルト。・・・嫌なことは全部、忘れてしまえばいいんだよ。」
そう呟いて、触れるだけの口付けをナルトに落とす。
その表情は悲しさとか、侘しさとか、せつなさを全て混ぜ込んだような・・・・今にも泣きそうなものだった。
「ゴメンな・・・何もしてやれない、ダメなオトナで。」
もう何度呟いたかわからない謝罪は、いつだってナルトが眠りに落ちた後だ。
そして、ナルトは朝になれば、夜半の出来事は全て忘れてしまっている。だから、カカシの謝罪がナルトに届くことはない。
けれど、カカシはこうしてナルトが眠りに落ちるのを見守るたびに、謝罪の言葉を口にする。
気づいてやれなくて、ゴメン。
守ってやれなくてゴメン。
助けてあげられなくて、ゴメン。
全てはもう告げることの出来ない言葉ばかりだった。
窓から入り込む月光を受けて眠るナルトは、ヒカリが金の髪に絡まって、キラキラと光って見える。
昼間の騒がしさから想像つかないほど静かに眠るナルトは、ヒカリに包まれて、いっそ神々しささえ感じてしまう。
けれど、すぅすぅと穏やかな寝息をたてるその顔は幼くて、ナルトがまだコドモだという事実を容赦なくカカシに突きつけるのだ。
ナルトは幼い頃から、九尾のせいでいわれなき暴力に晒されていた。その暴力がナルトの何もかもを蹂躙していたことを知ったのは、
カカシが正式に監視役となってからだった。
昼間は暴力に晒され、夜は身勝手な大人たちの欲望に晒される。
その事実を目の当たりにしたとき、カカシは崖から突き落とされ、深淵に落ちていくような衝撃を受けた。
一方的な欲望に塗れたナルトを「監視役」という役割にも関わらず抱き上げたときは、涙すら零れ落ちた。
けれど、その翌日、カカシはそれ以上の衝撃を受けた。
ナルトには夜の記憶が一切なかった。
翌日会ったナルトは、普段どおりで、こっそりカカシが昨夜のことを問いただしても一切覚えていなかったのだ。
自分の身におきた事も、カカシと会ったことすら忘れていた。
最初は強がっているのかと思ったカカシだったが、それが演技ではないと分かったとき、カカシは目の前のナルトの傷の深さを、改めて思い知らされた気がした。
ナルトは己の身に起きた全てを、夜の闇に溶かしてしまう。
けれど、その記憶は夜の闇とともにナルトの中に蘇り、薄汚い欲望を処理するためだけに訪れる男たちを、抵抗することなく受け入れるのだ。
それが、1人で暴力と欲望に晒され続けたナルトが、選択した悲しい方法だった。
太陽の下、キラキラと曇りのない笑顔を浮かべて動きまわるナルト。
そんな自分を守るためには、そう選択するしかなかったのかもしれない。
自分の知らない所で、どうしようもなく傷ついていたナルト。
そしてそれを守れなかった自分。
それからカカシは決まって夜はナルトの傍にいることにした。
どんな理由であれ-ナルトの中の九尾の存在が隠されている以上は-里の人間を傷つける権利はカカシにはない。
どれほど、ナルトの悲鳴が聞こえても、卑猥で淫らな音が満ちようと、カカシはただじっと耐えるだけだ。
そして、傷ついてボロボロのナルトをせめてもの思いでキレイにしてやり、眠りに落ちるその一瞬を見守る。
それだけが、唯一カカシにできること。
「おやすみ・・ナルト。」
ナルトが眠りに落ちた後もカカシがそうやって囁けば、ナルトはわずかだけども口角をあげて笑ってくれるような気がする。
それが、カカシの願望が見せた幻でもいい。カカシは、夢の中ではナルトが少しでもシアワセであればいい、と月光の中動かす手は止めない。
繰り返し、繰り返し繰り返されるカカシの手は優しい。
髪を優しく梳き続ける無力なオトナと、全てを忘れて眠り続ける悲しいコドモを、月だけがただ静かに照らしていた。
今は安らかに眠ればいいよ。
いつか、君を救えるほどの力を、きっと手にいれるから。
だから、今は眠っていて。
無力で愚かな僕の傍らで。
風のない静かな夜。
雲ひとつない夜空を彩る月だけが煌々と、眠りに落ちた里を照らしている。
ひっそりと静まり返った夜では、動くものも見当たらず、虫の音だけが染み入るように響いていく。
時折、上忍だろうか。人影のようなものが一瞬横切っては消えていく。音といえばそれぐらいで、忍の里という名に相応しいほど、静寂で満ちていた。
カカシは、そんな夜の暗闇に紛れるようにして、佇んでいた。
場所は、通いなれたナルトの自宅のある古びたアパートの脇。
今にも崩れそうな様子を呈している壁にもたれるようにして、ただ時間が過ぎ去るのを待っているのだ。
カカシにとって、悪夢ともいえる、この時間を。
壁一枚隔てた室内からは、途切れ途切れの甘い声が聞こえてくる。
乱暴に笑う声と、嬌声とも啜り泣きとも聞こえるナルトの声。
「ほら、もっと足開けよっ。」
「あっ・・・ひぃっ、あぁんっ!!」
「へっ・・相変わらず、シマリのいい穴だよな、てめぇは。」
「やだぁ・・もぅ、はぅっ!」
上忍としての能力の高さ故、常人であれば聞き取れないような音まで拾ってしまうカカシの耳には、中の会話すら届いてしまう。
カカシはそんな己の能力の高さをこの時ばかりは恨まずにはいられない。
ギリギリ・・と音が聞こえるのではないか、という程強く握り締めた拳には、いつだって薄っすらと紅く血が滲んでしまう。
恐らく誰も見ていることなどないと分かりつつ、カカシは決してそのポーカーフェイスは崩さない。
むしろ、普段よりもその無表情には磨きがかかり、一見すると能面のように見えた。
その間にも、中からはナルトのあられもない声と、男の嘲笑にも似た声が絶え間なく聞こえてくる。
声に重なるようにして響くグチュグチュという水音すら、漏れ聞こえ始める頃には、ナルトの声は切れ切れの悲鳴となっていた。
「ヤメテ」というナルトの悲鳴に重なるように聞こえる男の下卑た嘲笑が耳に入るたびに、動きそうになるカラダを押さえつけて、カカシは怒りとも、憎悪とも形容しがたい感情を内に秘めたまま、ただ時間が早く過ぎ去ることだけを祈っていた。
カカシにとっては、地獄のような時間が終わったのは、握り締めたカカシの手の平から、血が滴り始めた頃だった。
ガシャガシャと耳障りな音を撒き散らしながら、男が階段を降りてくる。
どこまでも野蛮でガサツに雰囲気を隠そうとしない男が、忍びではない一般人、そしてヤクザまがいの男であることをカカシも知っている。
ナルトだけではなく、誰にとってもタメにならないその男を、カカシは何度殺そうとしたかわからない。
けれど、所詮それはできない話だった。
その代わり、カカシは何度となく男を殺した。その頭の中で。
誰よりも惨く、そして苦しみが続く殺し方で。
それは、この男だけでなく、こうしてナルトの元を訪れる男は、全て殺している。
男は、カカシの存在に気づくことはもちろんなく、どこか満足そうに笑いながら、夜の道を歩いていく。
カカシはその後姿にすら激しい殺意を抱いて、ついクナイを投げそうになってしまう。
その衝動をなんとかやり過ごして、カカシは今しがた男が降りてきた階段を音もなく駆け上がった。
その僅かな距離が酷く、もどかしい。
「ナルト!」
半分空いていたドアを蹴破る勢いで駆け込んだ室内。
見慣れた室内はひっそりとしていて、昼間の雰囲気とはまったく違う空気を漂わせていた。
そこにあるテーブルも椅子も、見慣れたものであるのに、違うもののようにも見える。カカシは、何度体験してもこの空気が嫌いだった。
人の気配がまったくない部屋を横切り、窓辺のベットに近づけば、シーツに埋もれるようにして伏すナルトの姿があった。
白い肌には赤い鬱血の後が散り、下肢は夥しい体液で濡れていた。
よっぽど乱暴に扱われたのか、手首には掴まれた跡があり、太股を伝う液体は薄くピンク色に染まっていた。
くたり、と意識がないのか力なくカラダを投げ出している姿は酷く痛々しくて、ベット脇でそれを見下ろしカカシは知らず奥歯を噛み締める。
あまりにも強く噛み締めすぎたのか、口内に広がる鉄の味。それも、もう何度も味わった苦味だ。
それだけではない。光景は違えど、カカシはもう何度もこのように陵辱されたナルトの姿を見てきた。
この静まり返った夜の気配も、まるで知らない人間の家のような空気も、全てがもう幾度となく味わっている。
そしてその度に、カカシは思い知るのだ。自分の無力さを、不甲斐なさを。
どれだけ、『写輪眼のカカシ』と言われようが、恐れられようが、結局自分はコドモーナルト1人助けられない。本当に愛しい人間すら、救えない。
「ナルト・・・。」
ただ、名前だけを呼んで。カカシはそっとベット脇に跪く。
震える手で、色味のないナルトの頬に触れる。柔らかく滑らかな肌は、触れる感触こそ変わらぬもの、いつもの瑞々しい輝きは失われている。
「ナルト・・・・。今、キレイにしてあげるからね。」
カカシは今だ気を失ったままのナルトにそう呟き、手馴れた様子でナルトの処理をしていく。
体内に残る残滓を始末し、濡らしたタオルでカラダを優しく拭いてやる。
そうして、所々できている擦過傷や噛み跡にクスリをぬってやって、カカシは取り替えたシーツの上にナルトを横にした。
そろ頃になってようやく、ナルトが身じろぐ気配がしたので、カカシは優しく髪をすいてやりながら、名前を呼ぶ。
「ナルト。」
その声に、反応するようにそろそろ・・と瞼が動く。白く血の気を失った瞼の下から現われたのは、澄み切った空の色・・ナルトの瞳。
けれど、その色は普段より澄み切って、空というよりは、魚も住めないほどの水を彷彿させた。
キレイなキレイな・・キレイすぎて、誰も近づけない水。
「ナルト・・・カラダは大丈夫か?」
そっと、精一杯の愛しさを込めてカカシが問いかければ、ナルトは首を動かしてカカシを見た。
「うん・・大丈夫だってばよ・・。」
もどかしげに動く唇から零れる声は掠れて、痛々しい。それほど、喉を酷使したという事実に、カカシはまた怒りで震えが走りそうになる。
それを必死に精神力で押さえつけて、ナルトの髪を梳き続ければ、ナルトは心地良さそうに目を細めた。
「カカシセンセェがキレイにしてくれたんだってば・・?」
清められた体にそう尋ねるナルトに、カカシは頷いた。そんなカカシにナルトは、ありがとう、と言って困ったように笑った。
「センセェにめーわくかけたってば・・。」
「別にいいんだよ、気にしなくて。」
「ごめんね、センセェ。」
「いいんだ・・いいんだよ、ナルト。だから、もう眠りな。もうすぐ朝になる。」
「そうだってばね・・もうすぐ、朝・・・任務だってばよ・・・。」
繰り返される会話は酷く穏やかで、寂しい。
カカシは、その間もずっとナルトの髪を梳く。ナルトの口調は、カカシの手が髪を好くたび、緩やかになって、途切れがちになる。
カカシは、ナルトの瞳がウトウト・・・とまどろみ始めたのを穏やかな眼差しで見守っていた。
「センセェ・・明日の任務・・・。」
ナルトは、何かを言いかけたまま、くてん、と眠りの淵に落ち込んでしまった。
「・・・・おやすみ、ナルト。・・・嫌なことは全部、忘れてしまえばいいんだよ。」
そう呟いて、触れるだけの口付けをナルトに落とす。
その表情は悲しさとか、侘しさとか、せつなさを全て混ぜ込んだような・・・・今にも泣きそうなものだった。
「ゴメンな・・・何もしてやれない、ダメなオトナで。」
もう何度呟いたかわからない謝罪は、いつだってナルトが眠りに落ちた後だ。
そして、ナルトは朝になれば、夜半の出来事は全て忘れてしまっている。だから、カカシの謝罪がナルトに届くことはない。
けれど、カカシはこうしてナルトが眠りに落ちるのを見守るたびに、謝罪の言葉を口にする。
気づいてやれなくて、ゴメン。
守ってやれなくてゴメン。
助けてあげられなくて、ゴメン。
全てはもう告げることの出来ない言葉ばかりだった。
窓から入り込む月光を受けて眠るナルトは、ヒカリが金の髪に絡まって、キラキラと光って見える。
昼間の騒がしさから想像つかないほど静かに眠るナルトは、ヒカリに包まれて、いっそ神々しささえ感じてしまう。
けれど、すぅすぅと穏やかな寝息をたてるその顔は幼くて、ナルトがまだコドモだという事実を容赦なくカカシに突きつけるのだ。
ナルトは幼い頃から、九尾のせいでいわれなき暴力に晒されていた。その暴力がナルトの何もかもを蹂躙していたことを知ったのは、
カカシが正式に監視役となってからだった。
昼間は暴力に晒され、夜は身勝手な大人たちの欲望に晒される。
その事実を目の当たりにしたとき、カカシは崖から突き落とされ、深淵に落ちていくような衝撃を受けた。
一方的な欲望に塗れたナルトを「監視役」という役割にも関わらず抱き上げたときは、涙すら零れ落ちた。
けれど、その翌日、カカシはそれ以上の衝撃を受けた。
ナルトには夜の記憶が一切なかった。
翌日会ったナルトは、普段どおりで、こっそりカカシが昨夜のことを問いただしても一切覚えていなかったのだ。
自分の身におきた事も、カカシと会ったことすら忘れていた。
最初は強がっているのかと思ったカカシだったが、それが演技ではないと分かったとき、カカシは目の前のナルトの傷の深さを、改めて思い知らされた気がした。
ナルトは己の身に起きた全てを、夜の闇に溶かしてしまう。
けれど、その記憶は夜の闇とともにナルトの中に蘇り、薄汚い欲望を処理するためだけに訪れる男たちを、抵抗することなく受け入れるのだ。
それが、1人で暴力と欲望に晒され続けたナルトが、選択した悲しい方法だった。
太陽の下、キラキラと曇りのない笑顔を浮かべて動きまわるナルト。
そんな自分を守るためには、そう選択するしかなかったのかもしれない。
自分の知らない所で、どうしようもなく傷ついていたナルト。
そしてそれを守れなかった自分。
それからカカシは決まって夜はナルトの傍にいることにした。
どんな理由であれ-ナルトの中の九尾の存在が隠されている以上は-里の人間を傷つける権利はカカシにはない。
どれほど、ナルトの悲鳴が聞こえても、卑猥で淫らな音が満ちようと、カカシはただじっと耐えるだけだ。
そして、傷ついてボロボロのナルトをせめてもの思いでキレイにしてやり、眠りに落ちるその一瞬を見守る。
それだけが、唯一カカシにできること。
「おやすみ・・ナルト。」
ナルトが眠りに落ちた後もカカシがそうやって囁けば、ナルトはわずかだけども口角をあげて笑ってくれるような気がする。
それが、カカシの願望が見せた幻でもいい。カカシは、夢の中ではナルトが少しでもシアワセであればいい、と月光の中動かす手は止めない。
繰り返し、繰り返し繰り返されるカカシの手は優しい。
髪を優しく梳き続ける無力なオトナと、全てを忘れて眠り続ける悲しいコドモを、月だけがただ静かに照らしていた。
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