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予想外に長くなり、一話で収まらなかったよ・・・。
予定では白でハッピーエンドだったのに、未だその気配すら見えません・・・(汗)
ちなみにこのシリーズはすべて、教会関係からタイトルを頂いてます。
不届き者で、すいません。
最後の涙を流したあの日。
全てを受け入れると決めた、あの真っ白な日。
それでも、痛みは消えない。
身体が重かった。
ナルトはギシギシと軋んでいるかのような身体を引きずって、住み慣れた我が家へと歩いていた。
「今日は疲れたってば…。」
油断すれば、足が絡まりそうになるほど、身体は疲弊していた。
家に着いたら、まずはシャワーを浴びるのだが、今日ばかりはすぐにでも眠りたかった。
泥のように眠って、身体も心も真っ黒にしてなにも考えないようになりたかった。
最近は眠れない夜が続いていた。元々ぐっすり眠れることなんて稀な方だったが、最近は眠っていても意識は
うっすらと起きているような感覚が続いていて、前以上に眠れなくなっていた。
九尾の力のおかげで、倒れることもなく日々を送れているけれど、確かに体の奥には疲労が蓄積されていた。
それに加えて、体に吐き出された白い体液やそのせいで軋む体とか。
それでも数時間後にはやってくる朝だとか、任務のことだとか。
疲れの余り、輪郭さえ危うい意識は、すべてを放棄したがっていた。
何も気にせず、すべてを投げ出して、死んだように眠りたい・・・。そんなことはどうせ無理だとはわかっていたけれど。
どれだけ願っても訪れない眠りを懲りずに、願いながら顔を上げれば、ようやくアパートが見えてきた。
幼いころから暮らしているアパートはぼろくて、ナルト以外には誰も住んでいない。
けれど、今のナルトにとっては唯一といっていい、心休まる場所だ。
戻ってくると、いつだって無意識にホっとため息をついたナルトは、見なれたアパートの様子がいつもと違うことに気づいた。
月光に照らされたアパートの玄関前。そこに佇む人影。
その人影の正体に、ナルトは驚きに瞳を大きく見開いて立ちつくした。
猫背気味のシルエット。何よりも、ナルトだって忍のはしくれだ。隠すことなく知らされるこの気配は・・・・。
「・・カカシ先生・・・。」
なんで、とナルトの唇が声にならないつぶやきを漏らした時だった。
まるで、その声が聞こえたかのように、カカシがナルトの姿に気づいて顔をあげた。
・・おそらく、もうだいぶ前からナルトの存在には気づいていたのだろうけど。
「なんで・・・?なんでだってば・・・。」
カカシはナルトに気づくと、ひどく穏やかな笑顔で手を軽く振った。
そのあまりにも今の自分には似つかない様子のカカシに、ナルトは呆然とただ見上げることしかできない。
おそらく・・というか、カカシは間違いなく自分が今何をしてきたか、知っているはずなのに。
カカシは自分を見下ろして、待っている。
今更、自分に何を言いたいのか。ナルトにはカカシの意図は全然理解できなかった。けれど、逃れられないことだけはわかった。
今だけは会いたくなかったのに・・・。ナルトはズキズキと痛む胸を押さえながら、ノロノロとアパートの階段を上がった。
「センセイ、どうしたんだってば?」
ちゃんと笑えてるだろうか。ナルトはそのことばかり考えながら、カカシに話しかけた。
カカシはそんなナルトをいつものようにただ見下ろす。自分に何も話しかけないカカシが怖くて、
一生懸命ナルトは言葉を紡いだ。
「何?明日の任務のことだってば?だったら、早く話してくれってば、俺疲れて・・・・・。」
「ナルト。」
必死になって言葉を紡ぐナルトを遮るようにカカシがナルトを呼ぶ。それはナルトには、まるで死刑執行人の声のように聞こえた。
顔をあげなきゃ。笑わなきゃ。いつものようにしなくちゃ。
ナルトはそう自分に言い聞かせながら、なんとか言葉を紡ごうとした。
少なくと、今のナルトにはそうすることしか自分にはもう残されていない気がした。
「ナルト。」
不意に両手が温かいものに包まれた。
突然のぬくもりに体を強張らせて、おそるおそる見上げればカカシの瞳とぶつかった。
いつも片方を額当で隠し、のんびりとした光を宿すそれは、今は見たことがないほどまっすぐにナルトを
見つめていた。
ナルトはその瞳に捕らえられたように、まるで術にでもかかったかのように動けなくなった。
「もう、止めよう。こんなこと。」
「・・・!!その話はもう・・・!」
「終わってないよ。終わってない。お前にとっては終わった話でも、俺には終わってない。
終わってないんだ、ナルト。」
想像した通りの内容に、衝動的に怒りさえ感じてカカシの手を振り払おうとしたナルトを、カカシは離さない。
自分が想像もしていなかった強いまなざしがそこにはあった。
信じられないものをみる気持ちで、ナルトはカカシを見つめた後、うなだれるようにして視線を反らした。
いったい、いったい何が終わってないというのだろう。
もう、自分は汚れてしまった。
この罪は二度と消えない。
自分がやっていることが、どれほど惨めで空しいことなのか、ナルトはわかってる。
けれど、それしかもうナルトには縋るものがないのだ。
ウソにまみれたペラペラの言葉がほしくて、罪を重ねていく。
決して救われない、救われてはいけないのが自分だ。
九尾のことも考えれば、自分にはもう救われる道なんてないのだ。
あの日、ただ体を傷つけるだけだった暴力が、ナルトという人格を踏みにじった夕方。
一体、自分に何が起こっているのか分からないまま、グチャグチャに犯され、そのままゴミのように放り出されたあの日。
指先すら動かせない痛みと絶望の中で、ナルトはゆっくりと全てを受け入れたのだ。
流した涙が溜まって海になり、この身体を沈めればいい。
そうしてもう二度と、目覚めないように。